パンプを欲するゴリラ日記。

筋トレを中心に日々の体験や考えを共有していきます。

フィジークにおけるスター性と将来性を考える。【筋トレ】

 

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フィジーク。  

それは近年の日本におけるフィットネスブームの火付け役ともなっている競技だ。

  

実はこのフィジーク、日本ではボディビルよりも人気があるがボディビル競技の中ではまだまだ歴史の浅いものであることは意外にも知られていない気がする。

 

ボディビルが70年代から盛り上がりを見せているの対して、フィジークはオリンピアの種目に登場してからまだ5〜6年ほどなのだ 

 

そんなフィジークが近年人気の理由について僕が思うのは、ボディビルほど常軌を逸するサイズ感ではなく、なおかつスタイリッシュだからだと考える。

スタイリッシュというのは、肉体のならず私生活やファッションも含めてのことだ。 

 

高級車を乗り回し、おしゃれなトレーニングウェアでジムに現れ、様になるトレーニングをして、優雅な暮らしをしている。

確かに、こっちに方が万人ウケはいいのかもしれない。 

 

僕はボディビル競技全般が好きで、競技間に優劣はないと思う。 

サイズ感はボディビルに憧れ、生活感などはフィジーク選手に憧れているという感じだ。

  

 

では、今日の本題。

 近年、徐々にフィジークにおけるスター性が落ちていっているのではないかと感じる。

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まずはこの写真を見て欲しい。 

これは確か2013か2014年のミスターオリンピア・メンズフィジークの決勝だ。 

この蒼々たるメンツ。 

 

左から

ジェイソン・ポストン、サディク、ジェレミー、ライアン・テリ。ー

どの人物も一度はこのブログで紹介したことのある選手だ。

  

ジェレミーは4連覇したのち、現在では引退の噂もある。ちなみに昨年は怪我の影響もあり4位だった。大胸筋の断裂という大怪我から復帰してコンテストに参加するメンタリティはまさにチャンピオンだ。

 

そしてライアン・テリーは昨年3位で毎年上位に食い込んでくるトップ選手だ。元々モデル出身ということもあって非常に男前だ。

  

彼らはいいだろう、まだ前線でこの競技を引っ張っている。

問題はその他の選手なのだ。

 

ジェイソン・ポストンはここ数年競技から離れている。そしてサディクはクラシックフィジークに転向している。

フィジーク黎明期から第一線で引っ張ってきた二人が不在なのだ。

 

そしてさらに僕が深刻だと感じるのは、競技で成功を納めていった人ほど競技を離れていくのだ。 

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例えばジェフ・セイド

彼はIFBBプロの選手として非常に有名だ。

 

そのルックスや振る舞い、トレーニング中のかっこよさなどからもスター性の塊といえよう。

彼もここ数年、競技から遠ざかっている。

その間、モデルやアパレルなどで収入を得ているようだ。また世界各地でイベントを開いたりしており大盛況だ。いつか日本にも来るのだろうか。

 

さらに彼はYouTubeの登録者も半端ない、なんと100万人越えだ。 


THE RETURN OF JEFF SEID

そしてこちらはジェフが怪我から復帰した試合だ、なんとジェイソン・ポストンが司会をしている。このコンテストでジェフは優勝した。

ジェフも選手としては計り知れないほどの才能を持っていた。

  

そして次はスティーブ・クック

彼もオリンピアでトップ5に入るほどの優れた選手だが、もう大会には出ていない。

 

彼はジムの経営をしながらYouTubeもやっている。当然のごとく登録者は100万人越えである。 

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彼も非常に人気でスター性がある人物なのだ。

いわゆるボディビル的なハードコアなトレーニングのみならず、もっと一般向けのエクササイズや自らのライフスタイルを発信しており、とても人気だ。

  

では、一方で現在のフィジークはどうなっているのか。

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こちらは昨年のオリンピアチャンピオンであるブランドン・ヘンドリクソン。

個人的にはずっと好きだった選手で、ようやく勝ったかという感じだった。

  

もちろんチャンピオンにふさわしい身体だし、人柄も申し分ない。いつも穏やかな対応で謙虚な姿勢を崩さない。日本で初めて行われたIFBBのプロ戦、フィジーク部門で彼は初のチャンピオンになったのだ。その際にも全身で喜びを表現しており、見ているこちらも気分が良かったのを覚えている。

 

そんな人間性も素晴らしく結果も残しているブランドンだが、彼にはスター性が足りないと僕は思うのだ。 

それは華やかさであったりオーラであったり、簡単に表現できることではないが、おそらくそれなりの人が感じていることなのではないだろうか。

 

フィジーク、さらにはフィットネスがもっと定着した文化になるためには誰しもが憧れるような選手が第一線にいなければならない。 

サッカーを見ればよくわかる、多くの人はメッシやロナウドに憧れる、そして彼らの前の時代にもそういった選手は数多くいた。

  

この問題はSNSを見てもよくわかる。

 

例えばブランドン・ヘンドリクソンのインスタのフォロワーは約45万人。

一方でジェフは360万人、サディクやジェレミーは約250万人。 

ジェレミー以外はオリンピアのチャンピオンになっていないのにも関わらず、 上に挙げていった選手は全員、現チャンピオンよりもフォロワーが多いのだ。

 

フィットネス界におけるインスタグラムの影響は非常に大きく、ユーザーが気楽にトップ選手のトレーニング風景や食事の様子を見ることができる。

つまり彼らは競技を退いた、もしくは退きつつもこの業界に計り知れない影響力を持っているのだ。

 

ちなみにブランドン・ヘンドリクソンはパッとでの選手なんかではなく、ここ数年で着実に色々な大会で結果を残し順当にオリンピアでも勝利したトップ選手である。

にも関わらずこの差だ。

  

今回僕が言いたいのは、フィジークという競技はそれだけで食べていけるものではないんだということ。

みんなこの競技を愛していることは間違いないだろう。

トレーニングが好きなのも間違いないだろう。

 

しかし、それだけでは食べていけない、金銭面的な成功を収めることができないのだ。

 

だからみんな競技で結果を残した後、「自分」という付加価値を持ってアパレルやサプリメント、YouTube、トレーニング指導のチームを作ったりして別のところで収入を得ようとしているのだ。 

 

ちなみにオリンピアのメンズフィジークでチャンピオンになるといくらの賞金が手に入るかご存知だろうか。

なんと日本円で約100万円だ。 

世界最大の大会でこの賞金なのだ。

 

これを初めて知った時は夢とか希望というものが全て打ち砕かれたのをよく覚えている。

自分がトップ選手になりたい、といったことではなく、彼らほどの努力を重ね、世界中から注目されていながらその程度の賞金しか得られない。

とんでもないことだと思った。

  

近年、日本でもかなりの頻度でコンテストが行われるようになった。 

昨年からNPCJという団体からIFBBプロカードが獲得できるようになり、日本でもプロ戦が行われるようになってかなりの盛り上がりを見せている。

  

しかし未だにアマチュアの大会では賞金なんて出ないし、賞品のプロテインをもらって宣伝させられているだけだ。

 

フィジーク選手になりたい、大会に出たい! 

という若者が増えることには嬉しさを感じる一方で、それだけでは食べていけないという現実をもっと知るべきだし、本当のスター選手たちがどうやって収入を得ているのかよく理解しておいたほうが良いと思うのだ。

  

フィットネスブームで憧れを抱く人が増える一方で、現時点でほとんどの人はそれを「職業」にすることはできないこの状況はなんとも心苦しいジレンマを抱えているように僕は思う。 

 

今後もこの問題には考えを巡らせて、またいつか共有できたらと思う。